日本の海上輸送と航空輸送の割合とは|海上輸送のメリット、デメリットも解説
日本では、海上輸送が輸出入の9割以上を占めています。国内輸送の割合も、海上輸送が増加傾向にあります。なぜ、海上輸送の割合が多いのでしょうか。
この記事では、海上輸送と航空輸送の概要や、海上輸送のメリット・デメリット、今後の課題などについて詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。
海上輸送とは
そもそも海上輸送とはどのような輸送手段なのでしょうか。ここでは、海上輸送の概要を解説します。
海上輸送の概要
海上輸送とはその名のとおり、海上ルートを利用し船舶を用いて貨物や旅客を運ぶことです。またの名を海運とも呼ばれています。
海上輸送では大量の貨物を効率的に運ぶことができるため、国際的な取引や輸出入ではよく使われている輸送手段です。海上輸送は、輸送手段の主流といえるでしょう。
航空輸送とは
輸送手段には、海上輸送だけでなく航空輸送もあります。ここでは、航空輸送とは何なのかを詳しく解説します。
航空輸送の概要
航空輸送とは、航空機を利用して貨物を運ぶことです。空中輸送、空輸とも呼ばれています。航空輸送には、空港から空港へと貨物を運ぶ方法だけでなく、航空会社が提供するドア・トゥ・ドアサービスなどがあります。
速さと安全性、確実性が高いため国際的な取引や輸出入で利用されますが、運賃が高いことがデメリットとして挙げられます。
日本における海上輸送と航空輸送の割合
輸送手段として海上輸送の他にも航空輸送や陸上輸送がありますが、日本ではどちらが多く使われているのでしょうか。以下で詳しく解説します。
日本の貿易における海上輸送と航空輸送の割合
輸出入では、2021年時点で重量ベースでは99.5%が海上輸送となっており、海上輸送がほとんどの割合を占めていることがわかります。
また、2013年のデータでは、海上輸送の金額ベースの割合は76.7%と、重量ベース・金額ベースともに海上輸送が多くなっています。
参考:外航海運/日本の海運
国内の輸送でも海上輸送の割合が増えている
国内輸送でも、海上輸送の割合は増加傾向にあります。実際、東京-大阪間に相当する500km以上では海上輸送の割合が50%を超えており、長距離の場合陸上輸送よりも海上輸送のほうが多く使われていることがわかります。
また、大量輸送は海上輸送が多く、小口輸送は陸上輸送が多いという点も特徴の1つです。
海上輸送の種類
ここでは、海上輸送に用いられる船の種類と、船ごとに運ぶものについて解説します。
コンテナ船
コンテナ船は、海上輸送の主要手段です。さまざまな商品や貨物を専用のコンテナに収めて輸送できる点が特徴です。
大小さまざまなコンテナを甲板上に積み上げて輸送します。食品や衣類などに加えて、危険物の輸送も可能です。国際規格によってコンテナの重さやサイズが決められています。
RORO船
RORO船は、Roll-On/Roll-Off船の略称であり、貨物を積んだトラックやトレーラーをそのまま積載し、輸送する貨物船です。自動車や建設機械などの大型車両を効率的に輸送するために用いられます。
車両を直接載せられるという特性から、効率的で迅速な貨物の積み下ろしが可能です。
ドライバルク船
ドライバルク船とは、さまざまな資源を大量に、かつ梱包せずに輸送する船です。ばら積み船とも呼ばれています。ドライバルク船で取り扱うのは、穀物や塩、鉄鉱石やアルミ塊、石炭や銅鉱石など多岐にわたります。
ドライバルク船のサイズはさまざまで、運ぶ貨物の量や寄港地の規模などに合わせたサイズを利用するのも特徴です。
石油タンカー
オイルタンカーや油槽船とも呼ばれ、石油類の輸送に特化しています。石油を積載するための大型のタンクが備わっています。
タンクは船倉内で複数に仕切られており、スムーズに原油の出し入れが可能です。また、安全性を確保するために、遠隔操作ができる自動荷役装置を備えた船舶も増えているようです。
LPG船・LNG船
LPG船・LNG船はガスを輸送する船です。それぞれの特徴は、下記のとおりです。
- LPG船(液化石油ガス船):ブタン・プロパンなどを液化したLPG(液化石油ガス)を輸送する貨物船。LPGタンカーとも呼ばれる。
- LNG船(液化天然ガス船):天然ガスを液化したLNG(液化天然ガス)を輸送する貨物船。LNGタンカーとも呼ばれる。
航空輸送の種類
航空輸送は、2つの種類に分けられます。ここでは、「旅客機」と「貨物専用機」について解説します。
旅客機
旅客機を用いて航空輸送を行う場合もあります。旅客機の場合は、上部に乗客が座って下部に貨物を載せるという形で行われます。
貨物のサイズは一般的に高さ160cmまでとなっており、大きすぎるものは載せられません。また、航空機のサイズによっては既定のサイズが上記よりも低くなるケースもあるため注意が必要です。
貨物専用機
貨物専用機は、貨物のみを輸送するための航空機です。ドアが大きく大型貨物を搭載できることが特徴です。また、上部に乗客を乗せる必要がないため、高さが160cm以上あるものでも積み込めます。
一般的に、高さ制限は299cmとなっているため制限内の荷物なら運べます。大都市間で活用されるケースが多いようです。
海上輸送のメリット
海上輸送にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、海上輸送のメリットを4つ解説します。
大量輸送ができる
海上輸送の大きなメリットは、大量輸送できることです。数千TEU(Twenty-foot Equivalent Unit::20フィートコンテナ換算単位)のコンテナをまとめて運搬できます。
また、陸送用のトレーラーシャーシをそのまま積み込むことができ、重量の制限もありません。コンテナにおさまるサイズであればいいため、重量のある貨物の輸送にも適しています。
コストを抑えられる
海上輸送ならコストを抑えて輸送できます。大量の貨物を長距離輸送する場合、単位あたりの価格が抑えられるため輸送コストの削減にもつながるでしょう。
航空輸送は比較的運賃が高めですが、それと比較すると海上輸送の運賃は安くなっています。大量の貨物を安く輸送できるため、コスト効率に優れた輸送方法です。
環境に配慮できる
海上輸送は、環境負担の少ない輸送手段でもあります。運ぶ商品の量や距離に対してCO2や大気汚染物質の排出が少ないため、環境に配慮した輸送手段です。
また、技術の進歩によって環境に配慮した船が登場したり、新技術も増えてきたりしています。そのため、今後ますます環境への影響が小さくなる可能性もあるでしょう。
海上輸送のデメリット
海上輸送にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、2つのデメリットを解説します。
緊急性の高い商品や、新鮮な食材などの輸送には不向き
海上輸送は荷物を速く輸送したい場合には不向きです。船の速度は通常20~30ノットとなっており、およそ37~56km/hです。航空輸送と比較するとスピードは遅く、航空輸送なら数時間の距離が海上輸送なら数週間かかることもあります。
天候や世界情勢により、予定が遅れる場合がある
海上輸送は、天候や世界情勢に左右されがちです。たとえば、台風の接近によって海上の天候が不安定になるなどして、スケジュールが大きく遅延することもあります。また、港の混雑状況や国際情勢も大きく関わってきます。
場合によっては、紛争を避けるために遠回りのルートを使うことになり、予定が大幅に遅れるケースもあるでしょう。
必要な書類手続きが多い
海上輸送では、輸出入に関する規制が厳しいため、以下のように多くの書類の手続きが必要です。
- 集荷:工場や倉庫から港まで貨物を運送する
- 搬入:貨物を港のコンテナヤードに集積する
- 輸出通関:通関へ貨物を申告し、輸出許可を得る
- 本船への積載:貨物を船舶へ積み込む
- 出港:目的地へと出港する
- 着港:目的地へ着港後、諸手続きを行う
- 搬出:目的地の港のコンテナヤードに貨物を集積する
- 輸入通関:通関に申告し、輸入許可を得る
- 配達:貨物を最終仕向地へ運搬する
必要な書類は、それぞれの国の法律に適合させる必要があり、目的地の港に到着してからの国内輸送に関しても手続きが必要です。
手続き全体で時間とコストを要するため、輸出入業者にとっては大きな負担となります。
海上輸送にかかる日数
海上輸送にはどの程度の日数がかかるのでしょうか。一般的に海上輸送は、集荷、搬入、通関、積み荷、出港、着港、搬出、通関、配達の流れで行われます。
出港~着港までの期間は向かう場所によって大きな差がありますが、日本と各都市の輸送にかかる日数は以下のとおりです。
- 日本とアメリカ西海岸:12日
- 日本とサウジアラビア:19.5日
- 日本とブラジル:40日
- 日本とイギリス:40日
海上輸送の課題
海上輸送は優れた輸送手段ですが、課題もあります。ここでは、海上輸送の課題を詳しく解説します。
船員が不足している
海上輸送の大きな課題として挙げられるのが、船員が不足していることです。特に、国内貨物の海上輸送においては、船員不足が深刻化しています。
平成28年には船員全体の54.6%が50歳以上となっており、30歳未満の若手船員はわずか16%に留まっています。このように、船員の高齢化が進んでおり、若手船員の確保・育成が急務です。
環境問題、脱炭素化への取り組み
海上輸送は大きなエネルギーを使うため、従来から低エネルギー化が進められてきました。海上輸送は、大量輸送や長距離輸送に向いており、今後も日本だけでなく、世界的に増え続けると考えられています。
しかし、船舶の燃料の多くは重油や石油由来であるため、アンモニア・水素といった次世代の脱炭素燃料の検討、環境に配慮したサステナブルな船の開発、CO2排出量が少ないグリーン燃料(LNG等)の導入が進められています。
海上輸送の課題取り組み方法
海上輸送の課題解決を目指すには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは、2つの取り組みを解説します。
労働環境の改善
船員不足を解消するためには、労働環境を改善する必要があります。人材が定着して活き活きと働けるようにするためにも、労働環境の改善・業務の効率化を図って働きやすい環境を構築しましょう。
海上輸送では船内で過ごす期間が長くなるため、生活のしやすさも大切です。また、多様な人材を女性船員の雇用に向けた対策も同時に求められています。
GHG排出量の削減
GHGとは「Greenhouse Gas」を略した環境用語で、温室効果ガスを指します。化石燃料は燃焼時に多くのGHGを排出するため、カーボンニュートラルを目指すにはGHG排出量削減が急務です。
航行ルートの最適化や減速運行などの航行技術の向上だけでなく、船体の高性能化、港湾でのロボット導入、グリーン燃料(LNG等)の活用などが対策として挙げられます。
まとめ
海上輸送とは、貨物を船舶に載せて海上ルートで輸送する方法です。大量輸送が可能、コストを抑えやすいなどのメリットがあるため、国際的な輸出入だけでなく国内輸送でも海上輸送は多く利用されています。ただし、輸送に日数がかかるため緊急性のある商品には向いていません。また、船員不足や環境問題への対策なども求められています。
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